iOSの将来、”Objectified”という映画

Objectified
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10月29日に、Appleのトップの人事の変更が発表され、これまでiOSのソフトウェアを管轄していた、Scott ForstallさんがAppleを去り、それによってトップの人事が変更されたことがプレスリリースにのせられました。
Apple – Press Info – Apple Announces Changes to Increase Collaboration Across Hardware, Software & Services

この後の人事をまとめたもので一番分かりやすかったのがこちらの記事、Apple’s Reorganization Goes Deeper Than Just Who’s In Charge – Mac Rumors で、このようにまとめられていました。

There’s a long-standing pattern of separating watershed products important to the company’s future. The Mac and Apple teams. Mac OS X and Classic. The iPod division. iOS and Mac OS X. Suddenly, Tim Cook has pulled the reins in. Federighi owns software. Ive owns design. Cue owns services. Period.

意訳すると:これまでは製品毎にチームが分けられていた。Macチーム、OSXチーム、iPod部門、iOSという分割です。しかしティムクックは、それをシンプルに分け直しました。フェデリギがソフトウェアを監督する。アイブがデザインを監督する。キューがオンラインのサービスを監督する。以上

確かにとても分かりやすいですね。Mac OSX 10.8 Mountain Lionを見ると、ノートやリマインダのアプリなど、iOSからの多大な影響が見られるので、OSXとiOSを統括して考えるのはとても理にかなったものに感じます。

そしていろいろな記事を読んでみると、デザインに関して、Forstall と Ive が意を異にしていて、お互い口をきかない仲だったということが書かれていました。そして、Scott Forstallのポリシーとして、Skeuomorphic Design(現実の質感を模倣したデザイン)を推奨していたことが書かれています。Skeuomorphic Designに関しては、この記事が分かりやすかったです。Appleが推奨するSkeuomorphic Designとそのメリットデメリット │ Design Spice 特に顕著なのは、iPadのノートアプリやコンタクトアプリの紙の質感や、本のような見た目、縫い目が出ている見た目ですね。Jonathan Iveは、そのような見た目をとても嫌っていて、それは自分の責任の範疇でないという発言をしていたようですね。

しかし、これから、Jonathan Iveがソフトウェアのユーザーインターフェイスも担当するようになるということで、どのようなユーザーインターフェイスデザインンにかわっていくのかとても関心がありますね。そんな暁に、今日、iPad Mini の発売に一足先だって公開されたiPad Miniのレビュー記事で、Jonathan Ive氏が登場しているドキュメンタリー映画について説明されていました。発売直前!!:アップルが作り出した2つの“魔法”――「iPad mini」と第4世代「iPad」を徹底検証 (2/5) – ITmedia PC USER

ちなみに、アップルのやり過ぎなくらいまでに細かく議論を尽くしたデザインに興味がある人は、ぜひとも「Objectified」というドキュメンタリー映画を見てほしい。デザイン部門のトップであるジョナサン・アイブ氏が「オレたち、ちょっとやり過ぎだろう?」と照れながら解説してくれる。残念ながら日本語字幕や吹き替え版はないが、これこそ日本のメーカーの人たちにぜひ見てほしい映画だ。

この映画、日本では、Amazon.jpでDVDを購入できるようです。

オフィシャルサイトはこちら、Objectified: A Documentary Film by Gary Hustwit こちら米国では、Netflixという、月8ドルでちょっと古めの映画が見放題のサービスがあり、この映画も登録されていたので早速見てみましたが、デザイン業界の著名な方のインタビューで構成されていて、とても面白かったです。ブラウンの工業デザイナーが盆栽は、鳥が枝の間をうまく通過するようにデザインされていることについて述べていたり、デザインの本質が、使っている人が使っていることを忘れて作業に集中できることであることを説明されたり、究極のデザインを行うときには、ボタンや機能を極限まで削ぎ落とす必要があることなどが、多くのデザイナーによって語られていきました。

その中でJonathan Iveも出てきて、アルミのMacBook Proの一つの部品が、アルミの固まりから削りだされ、それがどれほど多くの機能を持っているかについて説明している様子が説明されていました。そして、例えばMacBookのスリープのインジケーターのように、必要な情報を示すものの、必要でないときにはそれがあることさえ気づく必要がないように作られていることが説明されていました。それによって、使っている人は、そのときに必要な部分だけに集中することが出来ると。

そのようなデザインの本質についていろいろなデザイナから語られるのを見るにあたり、Jonathan Iveが、iOSのSkeuomorphic Designを嫌っているのが何となく理解できてきました。確かにとっかかりは分かりやすいかもしれませんが、なれてくると、縫い目のデザインでリアルな感じをだすことは、あまり意味がないでしょう。それよりも、連絡先であればそれぞれの人物にいかに直感的にたどり着くことが出来るか、無意識に操作して欲しい情報をどれだけ簡単に手に出来るかが重要なはずです。そう考えると、Iveによって指揮されるこれからのiOSのデザインが、ただ装飾を削ぎ落とすだけでなくて、どのようにもっとユーザーが使いやすく、分かりやすいデザインになっていくのだろうと楽しみになってきました。

最初のラップトップコンピュータをデザインした方のインタビューものせられていましたが、コンピュータのハードウェアを最大限にデザインしたときに、ユーザはハードウェアのことを忘れ、画面にのめり込むため、ソフトウェアのデザインが重要になってくると説明されていました。それで、ハードウェアのデザインを行うだけでは、ユーザの体験を完全にコントロールすることは出来ず、ソフトウェアのデザインが重要になってきます。その点で、これからハードウェアとソフトウェアが同じデザイナによって監督されるということは、iOS、OSXにとって、とても良いことではないかと感じます。また、Androidのように、ハードウェア、ソフトウェアが別の会社によってデザインされているシステムと比べ、すべてを一つのチームが責任を持つ体制が、良いものを生み出せることが、よく理解できたと思います。

英語だけで、日本語字幕もないですし、ちょっと英語も難しかったですが、デザインを考えている人の言葉一つ一つがよく考えられたもので、含蓄のあるものでした。Jonathan Iveのビデオではいつもそのように感じていましたが、プロダクトについて真剣に考えていることを良く理解できました。デザインを行うすべての人が、是非一度見てみると良い映画だと思いました。

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